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懸腕直筆と合氣の手(一挙手) [AIKIDO TECHNIQUES 合気道 技]

 私は電子機器のメーカの技術職をしています。楽心館には一年通っていますが、書道は長く稽古して師範免許を持っている者です。合氣修錬で書道家として感じたところを、書いてみたいと思います。
 書道には「懸腕直筆」という運筆法があります。子供の頃、書道の先生に教えていただいて真似をしたのですが、すぐに「書きにくい」と文句を言い、そう言うのを見越していたかのように先生に笑われた覚えがあります。筆は常に垂直に持ち、脇をあけます。肘は直角に近くなると思います。そして肘を机につけてはいけません。
 書きにくいのは、鉛筆書きの延長で書こうとするからです。鉛筆書きでは、手首または肘で字を書いていると思います。「懸腕直筆」ですと、手首や肘の稼動で字を書くのは難しいので、冒頭の「書きにくい」という文句が出てくるわけです。
 話は変わって合氣の手(一挙手)です。楽心館に入門すると初歩の段階から、一挙手で入り身になって、相手を崩す運動を学びます。この運動の動きを、見た目で真似しようとしてもうまくいきません。腕ずくでやろうとすると、とてもぎこちない動きになります。または真似になりません。「一挙手の入り身の手」は、単なる手の運動ではなく全身運動です。この体の使い方が今まで自然にしてきた身体の使い方とは違うからです。日常生活上にない動力の生み出し方です。
 そういえば、書道の先生が「懸腕直筆」のお話をするとき、「書道は体で書くもの」とも言われました。ということは合氣の手(一挙手)の原理が、今のままではひたすら書きにくい「懸腕直筆」の動力源にならないだろうかと思ったのは稽古の正解率が上がって来た頃です。だって、「懸腕直筆」が書きにくい最大の要因は、この型では手首も肘も殺されていて、今までのあたりまえの意識で手を動かそうとしても、筆がうまく動かせないことです。
 というわけで、私の中の「一挙手の入り身の手」の理解度という超重要ポイントは無視して、この方向に進んじゃうことにしました。具体的には、「懸腕直筆」の型をとり、筆先の接点をコントロールできる範囲で、腕全体を自然に脱力して落とします。肩から先は、余計な動きをしないように、腕を動かそうとする意識は捨て、動力を伝えるだけの棒だと思うようにします。あとは「一挙手の入り身の手」の要領(といっても想像なんですが!)で筆を動かします。
結果は以下の2点です。
 1、自分の体に近いエリアが書きやすくなったこと
 2、線質が改善されたこと
もちろん、本当に関係あるのか?そもそも稽古の理解度という超重要ポイントを無視した点はどうなのか?といったことも忘れてはいけないです。書き方を元に戻せば、再度この点が改悪されれば関係性が間違いないことは確かめられますが、せっかく腕が上がったのでそれはイヤです。今年の展覧会は、この方向で攻めてみようと思います。
 ところで、宮本武蔵の描いた枝の先っぽに鳥がとまっている「枯木鳴鵙図」http://ichirakusai.blog.so-net.ne.jp/2007-12-11で、もっとも再現が難しいのは、中央でスッと伸びる枝なんだそうです。昔、たまたま見たテレビで、水墨画の先生がいってました。武蔵ならではの線質だとかいっていました。また、「五輪書」を読んでみるかぎりでは、宮本武蔵が力ずくや生来の身体能力だけで刀を振り回すのが得意だった人というわけでもないようです。私に審美眼はないですし、美術品の価値もわかりませんので事の信憑性は知りません。そのテレビの先生のこじつけかもしれません。ですが、少なくとも書画の技術と武道の技術が、宮本武蔵個人の中で、何らかの反応をみても不思議ではないと思います。私にとって楽心館での稽古が面白い理由のひとつです。

                                           千葉本部道場 小堀寛和

Aikido Rakushinkan Japan 合気道楽心館(東京・千葉・埼玉):http://aiki.jp/
Movie Blog 剣柔一体(北海道苫小牧・東京・千葉):http://blog.goo.ne.jp/ichirakusai3?
問合せメール:ichirakusai3@mail.goo.ne.jp

 


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