腹八分で [素心]
昔、私の稽古に出ていた方(仮にAさんとします)から聞いた話から、始めます。Aさんは新幹線で、ピアニストの中村紘子さんと隣り合わせたのです。Aさんは教育業界で広く仕事をしていた関係で、名詞交換をしたら、自ずとそちらの話になりました。
中村さんは最近、作家でもあります。もしかしたらどちらかに、同様の話を書いている可能性もあります。概略こんな話です。「これはピアノの才能のある子だと見込んで指導していると、結局伸びず。これは才能のない子だと思ってほどほどに指導すると、その子が光る才能を発揮することがある」、そんな話でした。伝聞の上さらに月日が経っているので、中村さんが「ほどほどに指導すると」などと仰せになったかは定かではありません。この辺のところは、割り引いて読んでください。中村さんならずとも、芸や技・仕事を伝える立場の人なら、嫌と言うほどこうした経験をしているはずです。前段と後段に分けて、考えてみたいと思います。
前段は「才能のある子だと見込んで指導」、です。相手の状況にあわせて教えているつもりが、勢いあまって自分の持っているものを全部伝えてしまう。ふさわしい場を与えてしまう。結果、相手は勘違いするか、腹を壊すか、吐き出してしまう。与えすぎた結果の悲劇。
後段は「才能のない子だと思ってほどほどに指導」、です。相手はどうせ分からないだろうからと、ほどほどのに指導する。ふさわしい場を与えようとも思わない。結果、相手には少し物足りないくらい、ちょうど腹八分目までご飯を食べたような状態で健康的。与えすぎない結果、意欲を伸ばした喜劇。
仏教でも、仏に応じて法を説け、という。とにかく仏教・中村さんをもってしても、この見極めが難しいってレベルの話でした。
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