「争わずして勝つ」と合気道 [素心]
争わずして勝つ
老子は「天の道は、争わずして而も善く勝つ」(意味 …天の道は、争わないでいてうまく勝ちを占める)といいました。
武士道は「剣は抜かずに相手を制する」を、理想としました。
合気道とは
「武」は「矛」と「止」の会意文字。矛を持って、危険な場所へ踏み込む勇気を意味します。「道」とは人間形成の道・人の道。仁徳を養うこと。
武道とは、仁徳を以て武勇を包み隠す修錬です。
そして合気道とは、「剣を使わぬ剣術」です。老子から一貫しています。また老子を引用せずとも、天地自然の理です。
消える力・消える動きの大切さ
武士同志に「剣は抜かずに相手を制する」を成立するには、二つ条件あります。
1、ある武士は、「消える抜き・消える斬り」を技術として持っている。
2、相手の武士は、「消える抜き・消える斬り」の速さの怖さを、身を以って知っている。
1の武士と2の武士が対峙した時、争うことは無意味になります。武術的速さの怖さを知らない者であれば、仁徳で導くよう努力しなければなりません。
合気道の稽古
「争わずして勝つ」を哲学としてではなく、技術として再現するところに、合気道の目的あります。
日々の稽古は、剣の理合の修錬により、「消える力・消える動き」を習得します。技を使わなくて済むのが理想ですが、たとえ争いの場面でも、相手が反応できない技を持たなければなりません。
剣の理合「消える力・消える動き」によって、相手を無力化する接触技術を、合気と呼びます。
氣と丹田
一般に稽古事は、「型より入って、型より出る」といいます。この言葉による説明は難しいので、私は「器(型)と料理(真理)」としています。
「器を作り、料理を盛る」場面をご想像ください。楽心館の階梯では、白帯の級審査が、「器を作り」です。基本姿勢・基本動作・基本体術の型・基本剣術の型などの習得です。
楽心館の階梯では、黒帯の段審査が、「料理を盛る」です。中心の確立・緩みの養成・剣の理合いを進化させ接触技術として応用します。楽心館ではこれらを一言で、「氣と丹田」(中心と緩み)といっています。
有段者の願い
写真は有段者の稽古。
初めに、何を稽古したいですか?と聞くと。
「つながり」・「抜く」・「中心と緩み」・「初動を消すこと」などを望まれることが多いです。
これらのどれが欠けても、一拍子の呼吸力、再現は難しいそうです。
宮本武蔵の晩年の自画像を参考するよう、話しました。中心の確立・緩んだ全身・無拍子。すべてが含まれていると感じます。
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