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術(芸)と道 [素心]

三遊亭円楽師匠が、高座を降り引退宣言をなさった。

脳梗塞を患った。一日三回の稽古をして、自分の得意の噺に臨んだ。
夫婦の微妙なやり取りを、自分の納得のいくように表現できなかった。
芸こそ、自分を見る物差しだ。
だから納得のいく噺ができない自分を、許せない。
だから高座を降り、即その場で、引退宣言をした。

経緯は、こんなものだ。
円楽師匠が、昔の侍なら、胎を掻っ捌いて自害しているのだろう。心中を慮り、私は声を殺して落涙してしまった。(いや今、キーボードを叩いても、再度)
何度もの修羅場を乗り越えて芸を磨いた人間の孤独を、誰が知るだろう。
円楽師匠の妹さんは、JALスチュワーデスとして1972年(昭和47年)、ニューデリー墜落事故の犠牲となった。関連情報は
http://wpedia.search.goo.ne.jp/search/%C6%FC%CB%DC%B9%D2%B6%F5%A5%CB%A5%E5%A1%BC%A5%C7%A5%EA%A1%BC%C4%C6%CD%EE%BB%F6%B8%CE/detail.html?LINK=1&kind=epedia
きっとあんな日もこんな日も、前を向いて精進したに違いない。

武道の世界にも「心が大切だ」という人は多い。
しかし大半が、適当なものではないかと、私は思う。
禅的な思想・礼儀論を、取ってきて貼り付けて、「道」としているものが多い。
いや、違う。

術(芸)を磨く。そしてそれを自分・社会を見る物差しとする。
ここにこそ、道がある。

今の時代、教える人と学ぶ人が、お友達に成り下がっているのが多い。
師とならば、術(芸)に精進する、それを伝える環境を維持する。それ以外のことをする、必要ながない。
円楽さんにしてみれば、周囲から「円楽師匠!」と呼ばれ続け、慕われただろう。
でもそれでは彼は、自分が許せないのだ。
「師匠(先生)と 呼ばれるほどの 馬鹿ではない」、ということだ。

円楽師匠、本当にお疲れ様でした。

関連記事:石川「術と道」http://aiki.jp/ishikawa/message-ichiran.htm



タグ:三遊亭円楽
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遊び人みっちゃん

おはようございます。
笑点歴30年ではありますが、
今回の出来事にはいろんな意味で考えさせられました・・・。
もしこれが自分のことだったらと思うとどんな対応をしたか?
う~ん、まだまだ自分には雑念が多いようです。
また、お邪魔します。
by 遊び人みっちゃん (2007-03-04 05:09) 

楽心館と楽氣の代表

みっちゃん、こんばんわ。

「きっとあんな日もこんな日も、」

寄席を作って、大変な負債を抱えたこともありましたね。ことの経緯は分かりませんが、きっとそんな日も、だと思います。
良くも悪くも、芸人らしさですね。
by 楽心館と楽氣の代表 (2007-03-04 21:52) 

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