剣柔居一体 [武道:剣柔一体(気剣体)]
膝行。「しっこう」と読む。合気は、会津の殿中武術に起源を求める説に符合して、どの会派でも必ず行われる基本動作である。それだけにこの動作を比較すると、そこの指導者がどのような考えで全体の修錬を行っているか、垣間見ることが出来る。
私の考えでは膝行において、頭がぶれたり、肩と骨盤を結ぶ線が捻れてはならない。理由は簡単、「膝行は 立てば歩ける そのままに」。膝行と歩行、矛盾があってはならない。「しっこう」という武術的用語があったところへ「膝行」と当て字をしたのであって、元来は「漆膠」であったと考えるからである。
宮本武蔵の兵法三十五箇条の二十八番目は「しつこうのつきと云事」とある。「漆膠のつきとは、敵の身際へよりての事也。足腰顔迄も、透(すき)なく能(よく)つきて、漆膠にて物を付るにたとへたり。身につかぬ所あれば、敵色々わざをする事在り。敵に付く拍子、枕のおさへにして、静成る心なるべし」。
私が学ばせていただいている会津伝小野派一刀流では、斬り落とした後、敵の切り返しを殺すために漆膠して中心を取りに行く動作がある。そしてこれは、居合「横雲」の二太刀目の動作でもある。こうして今更に、なるほど武術は「剣柔居一体なのだ」と、思う次第である。
注)漆はアスファルトと共に、石器時代より接着剤として使われていた。割れた器や物を、膠着させるために漆を使うことが、 生活の中で行われていた。それが武術の中でも、相手と接着するように中心に入り身になることを、「漆膠」(しっこう)と呼ぶようになったと思われます。
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