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混合診療解禁とは ー国民皆保険とTPP [aikido 合気道 Twitter ツイッター]

    混合診療解禁とは ー国民皆保険とTPP

    小野昌弘 | イギリス在住の免疫学者・医師

    2014年5月16日 2時56分

    以下は2011年2月20日に書いた記事の転載ですが、混合診療にまつわる問題点は全く古くなっていないので、再度紹介したいと思います。

    90年代以来の医療関連制度の改変により、日本の平等な医療制度はすでに瀕死の状態です。菅直人政権が発足して以降、TPPへの参加がにわかにいわれるようになりましたが、その実態は知られないままTPP参加、開国という言葉が呪文のようにいわれています。しかし、すでに明らかになってきているように、TPPは公汎な分野にわたる協定であり、その中には医療制度が含まれます。今日はTPPの医療制度への影響について述べます。

    混合診療の解禁が迫られたのはTPPが初めてではありません。鳩山政権以前は、米国による年次改革要望書で医療分野を米国企業の都合のよいように改変するため事細かな要求が毎年出されていました。それをうけた規制改革会議が混合診療の解禁と株式会社参入を画策してきましたが、何とか押しとどめて来たというのが最近の歴史です。

    今回のTPP参加について日本医師会は「混合診療を全面解禁すれば、診療報酬によらない自由価格の医療市場が拡大する。これは外資を含む民間資本に対し、魅力的かつ大きな市場が開放されることを意味する。..公的医療保険の給付範囲が縮小され、社会保障が後退する。」と述べています. (日本政府のTPP 参加検討に対する問題提起 -日本医師会の見解-(2010年12月1日、日本医師会定例記者会見資料))

    日本医師会は国民皆保険が崩壊すると懸念しているが、既に日本の医療制度・国民皆保険は瀕死の状態。非正規雇用増加で、健康保険料が払えずに病院にかかれない若者が増加しています。06で70万人程度が無保険、2割の国民が無保険になる可能性と指摘されています (「国民皆保険本当のところはどうなんだ」日本医療総合研究所取締役社長、中村十念氏)。 正確な実態の把握が急務です。

    日本が先進国では稀なほど便利で質のよい医療が受けられる国であるということが忘れられています。例えば、お腹が痛くなって消化器専門医を受診したくなったとします。日本では、長くて数時間まてば専門医に治療してもらえます。欧米では、公的保険制度では一般医以外を直接受診出来ない事が普通です。

    うまく一般医を納得させられて、専門医を予約できたとして、(どんなに今調子が悪くても)専門医に診てもらえるのは大抵早くて2週間後。ある友人は、最近、腹痛で度々一般医を受診していたが放置され、もちろん専門医受診の機会はないうちに虫垂が破裂、腹膜炎になり結局救急で緊急手術しました。

    日本では考えられないのですが、緊急入院しても医者や看護婦がすぐに病室に来てくれるとは限らないそうです。その友人は、たまたま危篤になる前に医者が来てくれたので緊急手術にまわしてもらえて命拾いしたので運がよかったと思うとのこと。病院の中まで医療過疎地だということを改めて認識しました。

    一方で、高額の民間医療保険にはいっている人や金持ちは、プライベートの病院を受診できます。ここは完全予約制で、待ち時間なく、専門医に30分ほどかけてゆっくり診察してもらえます。こういう病院は診察料だけで最低1-3万円はかかる(つまり、検査代、薬代は別)ので、庶民が受診することは不可能。これが医療格差の実態です。

    TPPに含まれる、混合診療と医療への株式会社参入の解禁は、日本の平等で良質な医療システムの息の根を止めるためのもの、と言って過言ではないと思います。この結末は、高額な医療費・保険費用と医療格差です。そして、この改変で確実に得をするのは、外資の民間健康保険会社でしょう。

    TPPにより日本の国民皆保険制度が終焉の危機です。「崩壊」の危機ではなく「終焉」の危機であることに注意してください。既に日本の平等な医療制度は瀕死の状態。医師会はこれまで業界利益団体としてマスコミにネガティブキャンペーンを受け続けてきましたが、国民の立場で皆保険を守ろうとしています。

    これまでも医療規制緩和の議論と並行して、医療の些末な問題が大きくとりあげられてきました。ここでもマスコミの情報操作に惑わされて国民にとって誰が味方であり、誰が敵であるか、を誤ってはいけません。医療に問題が山積していることは、現場ではたらく医療従事者は重々承知です。これまでの医療における法的・社会システム上の問題は大きくなるばかりでしたが、医療関係者が皺寄せをうけても現場の努力で吸収して破綻を避けてきました。しかし、医療崩壊が進む中、現場にはもはや衝撃を吸収する余力はありません。また、上に述べたように皆保険制度が実質的に破綻しはじめていることは、社会全体のセーフティネットの問題と大きく関わっています。ここにも余裕があるはずはなく、日々状況は深刻になっていると思われます。人的にも経済的にも破綻は既に近いのです。今議論すべきなのは、逆であって、どのようにしてこの医療崩壊を食い止めるかという議論であり、実際にこのシステムを守るための方策作りです。

    TPPを推進するひとたち、以前より規制改革会議などで混合診療の解禁と株式会社参入を求めて来たひとたちは、欧米にこうした医療格差が存在することを知っているはずです。知っているからこそ、日本の平等な公的医療制度が「ビジネスチャンス」に見えるのです。それを利用して金儲けができることを知っているのです。医療関係者で推進するひとは、実情を知っているからこそ、欧米の医療関係者と同じようなレベルで金儲けがしたくてたまらないのでしょう。

    人は、このような人たちを新自由主義者と呼びます。しかしそれだけでは実態は分からない。私が重大な問題と感じているのは、ー主義でいえるような政治的立場ではないです。欧米の実情を知っていて、負の側面については何も言わずに、都合の悪い情報を隠して、あたかも日本の医療を改革してよくするかのような錯覚を与えながら、国民を騙して制度改悪をしようとする姿勢です。これには強い憤りを感じます。本当にためになるものならばオープンに議論すべきであり、それで困る事等何もないはずです。それが出来ないという事は、やましいことがあるからにほかならないと思います。

    今後大きく動いて行く政局の陰に隠れてTPP(あるいは類似の条約・協定)を結んだり制度改悪を行われる危険性は当面続くと思います。国民の絶え間ない監視、関心をもち議論をし続けていくことが重要な課題だと思います。

    小野昌弘

    イギリス在住の免疫学者・医師

    現職ユニバーシティカレッジロンドン上席主任研究員。専門は、システム免疫学・ゲノム科学・多次元解析。関心領域は、医学研究の政治・社会的側面、ピアノ。京大医学部卒業後、皮膚科研修、京大・阪大助教を経て、2009年より同大学へ移籍。札幌市生まれ。

後期医療、現役世代の負担増へ

2014年5月17日(土)2時0分配信 共同通信





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 厚生労働省は16日、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で現役世代が支払っている支援金の算出方法を見直し、現役世代の保険料負担を増やす検討に入った。その分、高齢者の保険料の増加を抑える狙い。患者の窓口負担を除く給付費に占める、高齢者が納めた保険料の割合を2024年度時点で約1%引き下げる内容。

 健康保険組合や協会けんぽなど現役世代の医療保険制度では、高齢化で支援金が膨らんだ影響で保険料率の引き上げ傾向が続いており、さらなる負担増には反発が必至だ。

 厚労省は月内にも社会保障審議会医療保険部会に見直し方針を提示。来年の通常国会への関連法案提出を目指す。


タグ:混合診療
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