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独立主権国家の尊厳を守る方法 [正しい歴史認識:国防 自衛 護国]


【快刀乱麻】主権回復記念日・政府主催式典に一言あり[桜H25

独立主権国家の尊厳を守る方法 東京大学名誉教授・小堀桂一郎
2014.4.25 03:26 正論

 昨平成25年の4月28日、政府は対連合国平和条約発効61年目の記念日といふ動機で、夙(つと)に自ら主唱してゐた「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を、憲政記念館を会場として開催した。式には畏(かしこ)くも天皇・皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、御退出に当つては聖寿万歳の三唱を以て御送り申し上げるといふ思ひ入れの深さを見せた。

主権回復記念日を控えて

 さうであれば、同じ主旨の式典が本年も第2回として行はれるか或(ある)いはむしろ今後恆例として政府主催で続けることにする、との宣言でも出されるかと期待してゐたが、その音沙汰はなかつた。又平成23年8月に、自民党の若手議員達が中核となつて結成した「4月28日を主権回復記念日にする議員連盟」が、その初志貫徹の意氣を見せてくれる動きもあるのではないかと見守つてゐたが、それらしき聲も一向に聞えてくる様子がないのはどうしたことであらうか。

 政府・政界の熱意の後退とは裏腹に、民間有志による「主権回復記念日国民集会」は平成9年の第1回以来連年欠かさず、この記念日を国民の祝日とすべく祝日法の一部改正を求めるといふ要望を訴へ続けて本年で満17年、記念集会は第18回の開催となる。辛抱強く続けてゐるものだと自讃したい氣持もあるが、翻つて言へば、20年近く世に訴へ続けてゐても、なほその目的達成の目途もつかない無力な運動体でしかないのかとの嘆きも亦(また)しきりである。

 毎年の集会の盛況を見れば、この運動に対する国民の支持と賛意は紛れのない確かなものであり、立法の府の内部にもあれだけの賛同者がゐたはずであるのに、本年はこの運動に対する政・民の姿勢の間に何か乖離(かいり)の氣配が見える。

 国家主権の尊厳を認識し、現実に回復することの緊要度は、減ずるどころか高まる一方であり、むしろ今日現在ほど広く国民一般に主権意識の確立が強く求められる時期は近年に稀である。

 国民集会が参加者全員一致の要望として連年訴へ続けてゐる諸問題とは、即ち隣国による我が領土領海侵犯事例への厳正な対処、被拉致同胞全員の救出、総理及び内閣々僚の靖國神社参拝に向けての無礼極まる内政干渉を断乎拒否すべきこと、歴史認識に関はる教科書編纂には我が国が文字通りに主権不可侵の認識を貫いて臨むこと等々、此等(これら)の懸案はこの運動の開始以来、連年の訴へにも拘らず何一つ十分な解決を見てゐない。

 それどころか近年は韓国が戦時慰安婦の存在を種に、中国が今なほ性懲りもなく、昭和12年の南京陥落時の市民の受難といつた、共に事実無根の言ひがかりをつけ、我が国の過去に向けての誹謗中傷を蒸し返してゐる。

国家としての矜恃欠く

 悪質な政治宣伝以外のものではないこの様な挑発に対し、我が国の外交当路者の対応はあまりにも紳士的にすぎる。それは実は主権国家としての矜恃を欠いた、戦争責罪意識に囚(とら)はれ続けてゐる卑屈さとしか映らない。国民はその低姿勢ぶりに、もどかしいといふよりはむしろ居堪まらない屈辱の思ひに駆られてゐる。輓近(ばんきん)民間言論人の対韓・対中論策にともすれば過激な反撥の語調が見られる様になつたのは、この嫌悪感情の反映として無理からぬものである。

 「戦後体制からの脱却・日本を取り戻す」、昔ながらの強く美しい国としての日本を取り戻すといふ現政権の掲げる政治目標実現の意欲に緩怠が生じたとは思ひたくないのだが、何か氣がかりな昨今である。我々は今喫緊の国家的課題として自主憲法の制定といふ極めて具体的な案件を抱へてゐる。

 やがて我々が持つべき自主制定憲法の最重要原理は、一言にして言へば独立主権国家の尊厳を守るといふ一事に尽きる。米軍の占領政策基本綱領に過ぎない日本国憲法を読んでみれば、前文に於いて主権の維持を謳ひながら9条2項で国の交戦権を認めないといふ矛盾を冒し、前文の内部だけ見ても、そこに用ゐてゐる主権概念は日本国民の歴史に基礎を持たぬ、アメリカ合衆国の特殊な時期の政治宣伝文書を下敷として定義されてゐるといふ醜悪な矛盾がある。

自主憲法のもと難問解決を

 かうした諸矛盾をその都度毎の政治的必要から出た詭弁(きべん)で糊塗(こと)しながら70年の戦後史の歳月が過ぎてゐる。この間に我が国が辛うじて法的に独立を保つてきたのは冷戦といふ国際政治の暗闘が展開する修羅場の余白の如き位置に居たことによる。自らの力によつての主権維持であつたと自負することはできない。そしてその余白は今や中華帝国の復活を企む覇権主義的膨張政策の刷毛(はけ)で塗り潰され、我が国の安全保障をそこに托せる様な空間ではなくなつてゐる。

 焦眉の課題となつてゐる自主憲法の制定、その新憲法に足を踏まへた形での安全保障体制の充実と民生の安寧、そしてそれら全ての上に立つ皇室の永世の御安泰のための法整備。かうした多数の難問解決の大前提として、国家主権意識の確立は必須の条件である。4月28日といふ主権回復記念日を控へての痛切な感慨を一言記す。(こぼり けいいちろう)


タグ:主権回復
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