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畳生活 [aikido 合気道 Twitter ツイッター]

志ある若者よ「畳生活」に戻ろう 帝塚山大学名誉教授・伊原吉之助
2014.4.29 03:32 (1/4ページ)正論

 脊椎圧迫骨折で暫(しばら)く入院しました。これで痛感したのが、立つたりしやがんだりすることの辛さでした。床に落ちたものを拾ふのがあんなに大層な作業だつたとは、つひぞ思ひ至りませんでした。

 ここではたと気付いたのが、戦後の若者の体力低下の原因です。畳生活を追放したからに違ひない、それは高度成長以降だと。

 ≪便利快適な生活の代償≫

 畳生活は正座を原則とします。脊椎が垂直になり長時間この姿勢を保つてくたびれません。正しい姿勢は正しい呼吸法に導きます。柔剣道で激しい格鬪の後、正座して呼吸を鎮めるのは、自然に深呼吸(腹式呼吸)するからです。

 あぐらは、座禅でお分かりのやうに尻の下に座布団を入れないと背中が曲がります。背中が曲がると呼吸も浅くなります。あぐらは長時間座るときの姿勢ではありません。日本人は、江戸期に正しい姿勢の保持を日常生活の中に取り込んだのです。これが戦後、特に高度成長期以降、椅子やベッドの生活に変はります。そして畳が日本の家庭から消えました。

 日本人は畳と正座、そして和式便所で足腰を鍛へました。立つたり坐つたりを日常無数に繰り返し、立居振る舞ひだけで毎日相当の運動量をこなしてゐたのです。

 でも高度成長以降、椅子や寝台を取り入れ便所も洋式に変はるとひ弱な子供が目立ち始めます。

 昔、今から何十年も前、高度成長の末期頃でしたが、某小学校の先生からこんな話を聞いたことがあります。

 「近頃、子供(小学児童)が弱くなつた。転んだとき手をつかず、顔面で着地して、おでこと鼻の頭と頤(おとがひ)を怪我(けが)する」

 「テレビに慣れて遠近感が身についてゐないから、飛んで来るボールをよけられず、顔面キャッチして顔の怪我が増えた」

 「校庭で『ばんざーい』と叫んで跳び上がつた子が着地した途端、両足首を骨折した」

 児童だけではありません。先生もひ弱になりました。

 「最近、朝礼で校長先生の話が少し長引くと、子供より先に先生がばたばた倒れる」

 「体操で子供に駆け足をさせるとき、これまで先生は先導して走つたが、今や突つ立つて笛を吹くだけで一緒に走らない」

 高度成長による生活の便利快適化は体力低下を招いたのです。

 ≪安楽椅子は安楽ならず≫

 正座の上体の姿勢は、実は柔剣道でいふ「自然体」「正眼の構へ」です。これは攻撃前の姿勢です。筋肉が緊張し過ぎると、次の動作が遅れ、相手に斬られてしまひます。それに過度の緊張は持続しません。忽(たちま)ち疲れ、姿勢を崩します。正眼の構へは適度の緊張なので持続しても疲れませんし、相手の動きに直(す)ぐ対応できます。

 安楽椅子では筋肉を緩めきりますから同じ姿勢を持続できない。始終姿勢を変へねばならず、しかも長く座つてゐると疲れます。正座は持続して一向疲れない。

 椅子生活で目立つのは、姿勢の悪さです。私の現役時代末期に、教室の学生でガバと両手を机の上に投げ出し、頭を伏せる聴講学生が珍しくなくなりました。私語をすると他の学生の迷惑になるので追ひ出しますが、寝る学生は、無礼者! と心中で叱りつつも、他の学生の邪魔にならないので放置しました。夜更かしのせいで眠いのだと推察してゐましたが、ふと、あれは自分の頭を支へきれないからかもしれぬと思ひ到つて慄然としました。

 万物の霊長たる人が宝である脳を支へられなくなつてゐる!

 ≪家庭は正座で足腰鍛錬≫

 サッカーでも大リーグでも日本人選手の活躍が目立つやうになりました。彼らは自分で自分の身体を鍛へます。それなら、ジムに通ふ前に、自宅で畳生活を復活してはいかが?

 人生の3分の1は修行時代、次の3分の1は貢献時代、残る3分の1は奉仕時代です。修行時代に多大の恩恵を受けた世間に、一人前になつた後は大いに貢献して世の中を支へ且(か)つ発展させ、隠退後は奉仕して後進を育てねばなりません。それには健康が不可欠です。この健康が、便利快適な生活のせいで頗(すこぶ)る不健康になつてゐるのなら、断固改めませう。

 若者よ、楽ばかりしてゐてはなりませぬぞよ!

 志ある若者は、自分一人だけでも畳生活に戻りなさい。畳がなければ板間でも座布団でOK。ともかく家庭内で地べたの正座生活に戻る。食事はちやぶ台でも箱膳でも宜(よろ)しい。寝るのは押し入れから出し入れする布団で。洋式万年床は年を取るまで追放しませう。

 かくて毎日足腰を鍛へることになり、健康の基礎が日常茶飯事のうちに構築できます。

 序(つい)でにエレベーター、エスカレーターの類は一切使はぬ、自動車にも努めて乗らぬとやれば一層効果的ですが、それは人の好き好き。先(ま)づは日常の立居振る舞ひで床生活を謳歌(おうか)すること。年を取つてからよたよたになりたくない方々は、元気なうちに地べた生活を加味されますやう。(いはら きちのすけ)


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